ある日、キツネが葡萄畑のそばを通りかかった。あまりに美味しそうな葡萄が垂れ下がっているので畑に入って取ろうとした。ところが、葡萄畑はしっかりと柵にかこまれていて、太ったキツネはその隙間を通れない。そこでキツネは考えた。
よし、それなら野うさぎを捕まえるのをやめて何日も空腹を我慢すれば、痩せて柵の隙間を通れるようになるに違いない
キツネは餌を獲る狩りをやめて自分の巣の中に何日もこもって、空腹をじっと我慢した。
やっと柵の隙間を通れるぐらいに痩せてきたので、フラフラになりながら巣穴から出て、葡萄畑の柵をすり抜け、お目当ての葡萄にありついた。
その葡萄の美味なこと。あまりにも美味しいので、ついついキツネは夢中になってもうこれ以上胃に入らないほど何房も食べ続けた。そして、生(な)っていた葡萄を全部食べつくしてしまった。
ハッと我に返ったキツネは、自分の腹が葡萄でパンパンに垂れ下がって、入ってきた柵を通り抜けられなくなってしまったことに気がついた。このままでは自分の巣穴に戻れない。そこでキツネは考えた。二つの選択肢があると。
プランA:
苦しいけれど食べた葡萄を全部吐き出して胃袋を元のペシャンコに戻す。
プランB:
漁師に見つかる危険を冒して柵の中にとどまり、葡萄の木の間に身を隠して、入った時と同じように痩せるまで待つ。
キツネが選択するのはどちらでしょう?
最小リスクで最適効果を選べ!
実は答えは両方とも間違い。
全部吐き出したのでは何日も空腹を我慢した甲斐がないし、柵の中にとどまるのでは命の危険があってリスクが大きすぎる。
「お腹いっぱいになるまで食べるなー!」
「少しだけ食べて、後は持って帰る」
そんな声も聞こえてきそう。
キツネが自分では柵の中に入らず、リスやネズミなど他の小動物に取ってきてもらうのはどうだろうか。
この方法なら漁師に見つかる危険、逃げ出せなくなる危険も回避できる。その代わり取ってきた葡萄を分け与える。
ユダヤの母親はいかに「最小のリスク」で「最適な効果」を導き出せるかを教える。
参入障壁を高くすることまで考える
他のキツネも同じようにリスに頼んだらどうするの?
じゃあ、鳥に頼むよ!
どうやって鳥に頼みごとをする?
空からよく見えるように大きな目印を描いて、そこに鳥の好きな木の実を置くのはどう?
他のキツネが真似したらどうする?
このように他のキツネの参入、つまり「競合」に、どうやって参入障壁を高くするかまで考えさせる。
家庭教育でここまでのやり取りは日本ではなかなか無く、考えさせるというよりは答えを教えがちなので、敢えて自分の子どもにも考えさせてみたい。
引用 及び 参考:
ユダヤ人の成功哲学『タルムード』金言集